エンゼルスが熱い。大谷翔平投手の加入によって、日米メディア、ファンから注目を浴びているが、実際にはどんなチームなのか。これまで、長谷川滋利、松井秀喜、高橋尚成ら日本人選手が在籍していたものの、ドジャースやヤンキースほどの認知度はない。前回ブログで紹介したトラウトや、メジャー通算614本塁打を放っているプホルス以外は、なかなか知られていないだろう。自分自身も、正直よく知らなかったが、今回、注目選手や戦力について改めて振り返ってみたいと思う。
まず、基本的には「打高投低」のチームと言われている。投手力はやや不安があるが、野手は揃っている。そんな印象だ。野手陣でまず、注目して欲しいのが、遊撃手のアンドレルトン・シモンズ。オランダ領、キュラソー島出身の28歳。キュラソー島といえば、ヤクルトのバレンティン、楽天でプレーしたアンドリュー・ジョーンズらの出身地だ。彼らが破格のパワーを持っているならば、シモンズは信じられない肩の強さを持っている。ぜひ、Youtubeで映像を確認してもらいたい。華麗なショートという型にはまらない動きと、バスーカのような送球は必見だ。練習時や、練習をしていない時も、普段からフワフワとした動きで、見ていて面白く、野球や人生を本当に楽しんでいるように見える。個人的にはエンゼルスの中で一番注目したい選手だ。
シモンズを遊撃手に構え、デトロイト・タイガースからFA(フリーエージェント)で移籍してきたイアン・キンズラーが正二塁手となりそうだ。35歳とベテランだが、MLBオールスターに4度出場、2016年にはゴールデングラブ賞も獲得している名手。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にもアメリカ代表として出場しており、チームの初優勝に貢献した。シモンズとキンズラーの二遊間。大谷の投球と共に、彼らの守備にも目が離せない。
大谷のDH起用時は一塁を守ることになるプホルス、シモンズ、そしてキンズラーと内野陣は充実している。負けじと外野陣も昨年シーズン途中にジャスティン・アップトンが加入。このアップトン、ミート力、パワー、走塁とスピード、守備、送球の5つで能力が高い「5ツール・プレーヤー」とも言われ、メジャー通算で256本塁打、138盗塁をマークしている。MVP2度のトラウト、走攻守揃ったアップトン、さらには、ダイビングキャッチなどスピーディな守備に定評があるカルフーンの3人で外野を固める。
捕手では昨年、ゴールデングラブ賞を獲得したマルドナドがどっしりと構える。センターラインを中心とした守りに加え、トラウト、プホルスなど本塁打を打てる打線も魅力だ。ここまでの野手陣を踏まえると、「(エンゼルスの)本気で勝ちに行く姿を感じた」からと、キンズラーがエンゼルス移籍を決めた理由が分かる気がする。依然として、同じア・リーグ西地区のヒューストン・アストロズには、アルトゥーベやコレアを中心に大物野手が揃っており、強さが目立っているが、エンゼルスも負けていないように思える。
問題は、投手陣だ。主力投手の中には数人、トミー・ジョン手術を受けて復帰したばかりの投手がおり、大谷を獲得したとはいえ、メジャー1年目で未知数な部分もある。それでも、ツーシームの使い手であるマット・シューメーカーや、カットボールが武器の守護神候補、ブレーク・パーカーらが若い投手陣を引っ張って行けば、ある程度安定するだろう。実際、昨年のアストロズも投手時が不安定ながら、最強打者陣でカバーし、途中加入のバーランダー投手の活躍もあり、世界一を勝ち取った。もちろん、大谷の活躍次第でも、投手陣のレベルアップは図れるが、マイク・ソーシア監督の選手起用や、ビリー・エプラーGMのシーズン中の補強なども、チームの命運を握るといってもいいだろう。
ソーシア監督は今年でエンゼルスを率いて19年目になる。メジャーでは珍しい長期政権だ。ファンの間では、「今年、プレーオフに進出できなければ、ソーシアの責任だ」などと囁かれているように、2018年のシーズンオフに長期契約が切れるため、チームの成績次第で進退問題が関わってくる。そんな中、メジャーで二刀流に挑戦する大谷もいる。遠征など日本プロ野球以上に移動が激しい中で、体のケアをしなくてはいけない。大谷の体調に細心の注意を払って、シーズンでうまく起用しながら、チームの成績も考える。ソーシア監督にとっても、二刀流のようなチームマネジメントとなっていくだろう。
主力選手がシーズンを通してケガをせずに戦えれば、プレーオフ進出は十分にあり得る戦力だと感じる。チーム内外から「今まではケガ人が多かった」という声が聞こえるように、選手の体の状態によって今年の順位が左右されると言っても過言ではないだろう。それこそ、投手陣だけでなく、トラウトやプホルスらが怪我をすれば、プレーオフ進出どころではなくなる。ならば、選手や監督というよりも、チームトレーナーが鍵なのか?それは言い過ぎかもしれないが、けが人ゼロで行けば、リーグ優勝も狙える位置にいるのではないだろうか。大谷への期待もある、ちょっとひいき目の見方かもしれない。それでも今年の「新生エンゼルス」は、何かやってくれそうな予感がする。