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ヤンキース田中が残留を決めた理由は?

ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手は11月3日に、オプトアウト(契約破棄)の権利を行使せず、ヤンキース残留を決めました。ポストシーズンの活躍で、すっかりニューヨーカーの信頼を回復したといってもいい中でのニュースは、喜びと共に驚きの声が上がっています。田中がそう判断した背景には、今シーズンオフのFA市場や球団の状況だけではない、何か特別な気持ちがあるのではないかと感じます。

MLB契約のオプトアウトとは?

そもそもオプトアウトとは、選手のために契約に盛り込む条項です。そこには代理人の戦略もあるでしょう。田中の場合、2014年に1億5500万ドル(約175億円、年平均25億円)で7年間契約をヤンキースと結びました。その契約の中には、4年後の2017年シーズンオフに、残り3年間の契約を田中の申し出で破棄ができる特約が付けられました。2017年オフに田中が年俸25億円以上の価値があると思われれば、契約を破棄してもっと良い条件(高年俸、長期間)の契約ができる可能性が高いといえます。田中は2017年オフに29歳と、投手としてはもっともいい時期といえるでしょう。3年後の32歳に長期の契約を模索するよりは、2017年オフに再交渉したほうが得策との判断があって、敏腕代理人のケーシー・クロースが勝ち取った条項なのです。

2017年オフのFA市場は?

田中サイドが判断するうえで影響してくるのが、他の選手の動向です。2017年オフのFA市場は、野手はKCロイヤルズのエリック・ホズマー、ロレンゾ・ケイン、マイク・ムスタカスやアリゾナ・ダイヤモンドバックスのJ.D.マルチネス、シーズン中にメッツからクリーブランド・インディアンズに移籍したジェイ・ブルースなど、20代後半から30歳前半の強打者が揃っていますが、先発ローテの1番を担えるエース級はダルビッシュとカブスのジェイク・アリエッタくらいです。大谷は最大の目玉ですが、二刀流がゆえに、シーズン全てにおいて中心を担えるかどうかは未知数。2017年オフはFA投手に有利の市場であるといえるでしょう。

もし田中がオプトアウトしていたら?

田中には常に肘の不安がささやかれ、2017年シーズン中はエースの状況とは程遠い不安定な試合もあったので、オプトアウトはしないという説がほとんどでした。オプトアウトしたところで、この成績ではどこも大型契約はしないだろうという予想です。しかし、なんだかんだで過去2年間はローテーションを守り切り、シーズン終盤の快投、特にポストシーズンは3試合で防御率0.90とビッグゲームに強い印象を確固たるものにしたところで評価が一変しました。また、ダルビッシュやアリエッタよりも2歳若いことで、今後活躍する期間が長いと判断される可能性もありました。トレード情報を予想する「MLB Trade Rumors」では、5年間で1000万ドルと予想。単年で見ると今の10%ダウンですが、契約残が2年増えるのでそれほどマイナスとは思われない内容です。それだけに田中がオプトアウトしなかったのは驚きというニュースもありました。ニューヨークのメディアは、田中は肘に不安を抱えているので賢明な判断をしたなど、ニューヨークに背を向けなかったのは正しいと報じましたが、そこには安どの気持ちが入っているでしょう。

残留を決めた田中の気持ちは?

楽天時代に田中は大リーグ挑戦の夢があり、ポスティング移籍を相談をしたところ、圧倒的な結果を残したら検討すると言われていたようです。そして2013年に24勝0敗でチームを初優勝に導き、誰も文句を付けられない結果を出したオフに星野監督が球団に掛け合い、MLB挑戦が実現したという経緯は有名です。ヤンキースとの契約は楽天への移籍金21億円や住宅、通訳も含めると7年間で275億円といわれ、当時は高すぎるともいわれました。その後さらに年俸相場が高騰しているMLBでもまだトップ10に入ります。田中からしてみれば、それだけ評価してもらったのに、まだ何も成し遂げていないという気持ちがあるのだと思います。もちろん、奥様の里田まいさんとお子様とのニューヨーク生活に慣れたこともあるでしょう。しかし、「ヤンキースに残るという決断は決して難しものではありませんでした」と述べているように、田中の中では圧倒的な成績を残し、若いチームメイトと共に常勝軍団を復活させ、チームに恩返しがしたいという気持ちがあるのだと思います。

ヤンキースファンの反応は?

田中が今シーズン最後にヤンキースタジアムで投げた試合は、10月19日のアメリカンリーグ優勝決定シリーズの第5戦です。それまで2勝2敗のタイ。6戦目以降はヒューストンで行われるため、絶対勝利が欲しい試合。相手はこれまでことごとく田中が投げ負けていたダラス・カイケル。田中はついに投げ勝ち、7回3安打無失点の快投でチームを勝利に導きました。試合後に地下鉄に乗ると、日本人の私を見つけたファンが「TANAKAー」と叫んでハイタッチをしてきました。彼は、「田中は間違えなくオプトアウトしてしまう、ワールドシリーズに行けなければ、ヤンキースの田中は今日が最後だ」という発言し、周りからは「そうなのか!?」と人が集まってきました。私は、「君たちには理解できないかもしれないが、田中は残る。だってまだヤンキースに恩返していない!」というと、この理論が全く理解できないのか、きょとんとしていました。それだけドライな契約社会の米国MLBで、勇気を出してオプトアウトせず残留をきめたのは、どこか日本らしさというか侍魂を感じます。「気持ち」を大切に挑戦し続ける田中の活躍を来シーズンも期待したいですね。

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